後見、信託、死後事務委任

【相続不動産専門 税理士 兼 弁護士が解説】法定後見制度

みなさんこんにちは。

相続と不動産で困った時の一番最初の相談先、

相続と不動産のパーソナルアドバイザー、税理士 兼 弁護士の中澤剛です。

 

この記事では、法定後見制度の概要について、弁護士がざっくりとわかりやすく

解説します!

法定後見制度の概要

法定後見制度とは、判断能力の無い方を対象に、家庭裁判所が選んだ後見人が、ご本人の心身の状態や生活状況に配慮をしながら、医療や介護に関する契約、施設への入所契約などの身上の保護と、預貯金に関する取引などの財産管理業務とを、本人を代理して行う制度です。

主な利用場面

認知症などで判断能力が低下してしまうと、契約などの取引行為をすることができなくなります。

そのため、例えば、預貯金を下すといった行為ができなくなってしまいます(お金を下すことも銀行との取引の一つです。そのため、銀行は、預金者が認知症であることを把握すると、口座を凍結してしまいます)。

その結果、ご本人が認知症になると、ご家族であっても預貯金を下すことができなくなってしまいます。

詳しくは、こちらのリンク(「対策のないまま認知症になるとどうなるか」)をご覧ください。

このとき、事前に任意後見契約を締結していれば、ご本人が認知症になっても、任意後見人が銀行との取引を継続できます。

任意後見契約については、こちらのリンクをご覧ください

しかし、事前に任意後見契約を締結していない場合もあります。

そのような場合に、家庭裁判所が選任した後見人が、ご本人を保護・支援していく制度が、法定後見制度というわけです。

法定後見のメリット

その1 判断能力が無い状態からでも利用できる

財産管理、任意後見や家族信託は、ご本人の判断能力に問題があると利用できません。

法定後見 財産管理 任意後見 家族信託
ご本人の判断能力が無くなった後に利用(契約)できるか  

利用できる

 

利用できない

財産管理についてはこちら、任意後見についてはこちらのリンクをご覧ください。

これに対して、法定後見制度は、ご本人の判断能力が無い状況でも利用できます。法定後見制度は、事前の備え(任意後見等)がない場合でも利用できる「困ったときのセーフティーネット」なのです。

その2 裁判所の厳格な監督

法定後見では、裁判所自らまたは成年後見監督人を通じて、後見人の監督が厳格になされます。

そのため、ご本人の財産が、財産を管理する成年後見人によって不正に害されるリスクが低いです。

その3 取消権がある

法定後見では、後見人に本人の法律行為の取消権があります。そのため、悪徳商法や詐欺などの被害が想定される場合に、後見人によって対応が可能となります。

デメリット

その1 各種対策はもはや不可能に

成年後見制度を利用する時点では、既にご本人は判断能力を欠いている状態です。

そのため、この時点では任意後見も家族信託も利用できません

また遺言を作成しても後日紛争となることが多いです。

資産運用や生前贈与もできません。

その2 ご本人の気持ちや要望が十分に反映されない

法定後見制度は、誰が後見人となるかを、裁判所が決める制度です。ですので、ご家族やご本人が信頼する専門家が選ばれるという保証はありません。

この点は、任意後見人を自分で選べる任意後見制度との大きな違いです。

任意後見 法定後見
後見人を自分で選べぶことができるか 選ぶことができる 選ぶことができない

(裁判所に決定権)

また、法定後見制度では、財産を残すのが最優先にされがちであるため、ご本人がして欲しいと事柄であっても、してくれない可能性もあります。

つまり、法定後見制度は、誰が後見人になるか分からないし、ご本人の希望やお気持ちが十分に反映されないリスクがあるのです。

その3 融通が利かない

後見人は、ご本人(成年被後見人)の意思が分からない中で行動します。そのため、後見人は本人の財産の維持を中心に行動しがちで、融通が利かない面があります。

例えば、相続人に対して生前に財産を贈与することは、たとえご本人の希望であっても、認められることは難しいでしょう。資産運用もできなくなります。

成年後見人としては、そうしないと、後日、他の相続人から「本人の財産を浪費した」、などと非難を受けるリスク(さらには、法的責任を問われるリスク)もあるので、やむを得ない面があるのです。

また、自宅不動産の売却には裁判所の許可が必要です。

その4 コストがかかる場合も

ご家族が後見人につく場合には、報酬を請求しなければ無料です。

しかし、専門職が法定後見人についた場合は、月額2万円(またはそれ以上)の報酬が発生します。後見監督人がつく場合には、さらにコストがかかります。

その5 特別な理由がないかぎり、途中解任ができない

いったん成年後見人を選任すると、選任された成年後見人の能力や資質や取り組みに疑問がある場合でも、ご本人が亡くなるまで、原則として辞めさせることができません。

<申立てから選任までの流れ>

成年後見制度を申立ててから、後見開始までの流れは上手のとおりです。申立てから後見開始まで、概ね1~2か月程度かかります。

ABOUT ME
弁護士 中澤 剛
相続と不動産の法律と税金を専門に扱う千代田区内唯一の弁護士 兼 税理士。 相続紛争など、家族にまつわる紛争案件と紛争案件の経験を生かした紛争予防(相続紛争や認知症によるトラブルの生前対策、税金対策)が強み。 「幸せの土台は家族関係」という想いから、日本中に感謝と敬意のある家族関係が増えることを目指して活動中。 息子(10歳)&娘(7歳)の父。 2010年弁護士登録。2018年税理士登録。 東大法学部卒。東大ボート部出身。淡青税務法律事務所所長。 倫理法人会、中小企業家同友会所属。
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