民事裁判

【民事裁判】認否について【弁護士が解説】

民事裁判中に、裁判所や、依頼している弁護士から、相手の書面について、「相手の言っている事実が合っている(〇)か違う(×)か、わからない(△)か教えて」と頼まれることがあります。

相手の言っていることについて、それは事実です(〇)と認めたり、違う(×)と否定したり、自分の知らない(分からない)ことである(△)とするこの作業、つまり〇×△をしていく作業を「認否」(にんぴ)と言います。

この記事では、原告桃太郎、被告鬼次郎の裁判を例に、認否について説明して行きたいと思います。

原告桃太郎の次の書面に対して、被告鬼次郎として、認否をしていきましょう。

原告桃太郎の準備書面

1 当事者等

原告は、平成30年5月5日、桃から生まれた一般市民である。

2 被告鬼次郎の悪事

原告は、令和10年4月頃、東京都千代田区鬼ヶ島に住む被告鬼次郎が悪さをしているという噂を聞いた。

被告鬼次郎は、令和10年1月から2月ころの間に、東京都中央区日本橋〇町1-1-1において、畑を荒らし、百貨店の財宝を奪った。

以上が、原告桃太郎の準備書面だとします。

被告鬼次郎として、これに認否をして行きましょう。

前提として、認否の種類について説明して行きます。

認否の種類

認否には、自白(じはく)、否認(ひにん)、不知(ふち)、沈黙(ちんもく)の4種類があります。

自白(じはく)・・・〇

自白とは、相手の主張する事実を認めることです。通常の意味の自白(悪事を行ったことを告白する)とは意味が違うので注意してください。

自白した事実については、証拠による証明がなくても裁判所はその事実を認めます。

つまり、こちらが自白すると、相手はその事実を証明する必要がなくなるということです。裁判所からみると、自白された事実については争点から外れる(前提の事実として扱う)ことになります。

一度ある事実について自白すると、撤回はできなくなりますので、自白は慎重に行う必要があります。

書類にメモなどをする時は、ある事実を自白するときは、その事実の箇所に、「〇」と記載するのが通常です。

否認(ひにん)・・・×

否認とは、その事実は存在しないとして争うことです。否認された事実については、相手方が証拠によって証明しない限り、裁判所はその事実を認定することができません。

否認された事実については証拠による証明が必要となるので、否認をすることで裁判における争点が浮かび上がってくることになります。

では、何でもかんでも否認すれば良いのかというと、そんなことはありません。それは、裁判官の気持ちを考えれば分かるかと思います。

こちらが「それは違う!」と相手方が主張するある事実Aを否認して、「実際はBだ」、と主張したのですが、相手方が証拠を提出してきて、その証拠からすると間違いなく事実Aが認められてしまう、というような状況を考えてみてください。

事実Aについてこちらが強く否認していたが、証拠からはその事実Aが認められるとなると裁判官はこちらが嘘つきだと判断します

本当は記憶違いで間違えただけであっても、裁判官に嘘つきと思われてしまっては裁判には極めて不利になります。

ですので、自白だけでなく、否認も慎重に行わなければなりません。

書類にメモを取る時などは、ある事実を否認するときは、その事実の箇所に、「×」と記載するのが通常です。

不知(ふち)・・・△

不知とは、その名のとおり、知らないということです。

例えば、こちらが被告Yだと仮定して、原告Xと被告Yの裁判の中で、原告Xの事実の主張の中で、「原告Xは、第三者Aと、~という会話をした」などというものが出てきたとします。

被告Yとしては、XとAとが会話したとかその内容がどんなものかなど「知らんがな」という感じです。ですので、そのような事実主張については、「不知」とすることになるでしょう。

知らないこと、つまり「不知」であることについては、その事実を証明しようとする人が証明しなければなりません。不知は、法律的には、否認と同じ効果をもたらします。

ただし、その人が知っていなければおかしいことについて、「不知」と答えるのは不自然です。

例えば、先ほどの礼で、被告鬼次郎としては、「被告鬼次郎は、令和10年1月から2月ころの間に、東京都中央区日本橋〇町1-1-1において、畑を荒らし、百貨店の財宝を奪った。」という準備諸目の記載に対して、知らない、不知と応答することはおかしいわけです。

被告鬼次郎は、畑を荒らしたとか財宝を奪ったとされているまさに本人なのですから、「俺はそんなことしていない」と否認するか、「たしかにやりました」と認めるか、どちらかですよね。

「分かりません。知りません」(不知)と答えたら、裁判官は、「は? 知らないって何?」と思うでしょう。

当の本人が回答できる筈の重大な出来事について、「不知」で済ませるのは裁判官から見たら相当悪印象になってしまうということは頭に入れておいてください。

自分と無関係の出来事は不知であることが通常。しかし、自分と関係する重大な出来事について不知というのはおかしい。」ということになります。

沈黙(ちんもく)

沈黙というのは、自白も否認も不知も何もしないということです。

今風に言えば、「既読スルー」といったところでしょうか。反応が無いです。

沈黙については、争っていると分からない場合には、自白したものとして扱われます。

認否の重要性

的確な認否をすることは、裁判で本当に争いのある場所(争点といいます)を裁判所に明確にするために非常に重要です。

自白した箇所は争点ではなくなり、否認した箇所で法律的に重要な箇所が争点となってくるからです。

さらに、当事者にとっては、自白してしまうと自白の撤回は基本的に認められないことから、その事実について争うことができなくなってしまうため、自白は慎重にしなくてはなりません。

かといって、否認した場合に、否認した事実について相手方から明白な証拠を突き付けられたような場合には、裁判官にはこちらが嘘つきと思われてしまいかねず、その場合には訴訟の帰趨に重大な影響を及ぼしかねないことから、安易に否認するのは危険です。

客観的証拠と照らし合わせながら、慎重に、丁寧に認否していくことが大切です。

認否の具体例

では、具体的に認否をしていきましょう。

以下は、被告鬼次郎の認否メモです。

〇、×、△でメモを作成します。

2行目 原告がいつ、どこから生まれたかは、被告鬼次郎にとっては「知らんがな」ということなので、不知です。△。

4~5行目 被告鬼次郎としては、原告が噂を聞いたということは「知らんがな」ということなので、不知です。△。ただし、被告鬼次郎はたしかに東京都千代田区鬼ヶ島に住んでいるので、その点は認めます。〇。 ただし、被告鬼次郎が悪さをしているということは争うので、その点は×です。 このように、認否はこまごまと丁寧にします

6~7行目 被告鬼次郎は善良な市民です。被告鬼次郎はこんな悪さをしたことはありません。したがって、全て否認します。×です。

以上のような作業を、相手の書面の1行1行できれば1フレーズごとに細かくしていきます

これが認否です。

実際に筆記具を持ち、〇や×や△をつけていくようにしてください。

このような認否によって、裁判所としては、「被告鬼次郎は、令和10年1月から2月ころの間に、東京都中央区日本橋〇町1-1-1において、畑を荒らし、百貨店の財宝を奪った」という事実があるのか無いのか、という点を争点として絞り込んでいくこととなるでしょう(なお、実際には争点の絞り込みには法律的な話が前提として必須なのですが、ここでは架空の設例ですので法律的な議論は無視しています)。

以上が、認否の説明でした!

ABOUT ME
弁護士 中澤 剛
家族との法律トラブル解決弁護士。 相続紛争や離婚紛争など、家族にまつわる紛争案件と不動産の問題が強み。 「幸せの土台は家族関係」という想いから、日本中に感謝と敬意のある家族が増えることを目指して活動中。息子(8歳)&娘(5歳)の父。 2010年弁護士登録。東大法学部卒。東大ボート部出身。淡青税務法律事務所所長。倫理法人会、中小企業家同友会所属。
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