養育費の強制執行

【養育費の不払い対策】強制執行までの3ステップを弁護士が解説

この記事では、養育費の支払いを求める場面を例に、養育費の強制執行について知りたい人が最初に理解しておくべき、全体的な流れを説明しています。

物事は、まずは全体的な見取り図を把握した方が、細かい箇所も理解が早くなりますが、それは、養育費の不払いに対応する強制執行という場面でも同じだからです。

より詳しく知りたい、という方は、各々の箇所に詳細を記載した記事のリンク先をご紹介していますので、そちらをご覧ください。

とはいえ、以下の目次のうち、「01 強制執行とは」と「02 強制執行は「伝家の宝刀」の2箇所は前置きで少々理屈っぽい話ですので、飛ばして

03 強制執行をするためには3ステップ

から読んでいただいて全く構いません

強制執行とは

そもそも、強制執行とは何でしょうか。

「強制」という名のとおり、国家権力によって、強制的に権利の実現を図る制度のことです。

養育費の例でいえば、相手が養育費の支払いを拒否しても、国家が無理やりに相手の財産を取り上げそれを売却してお金に交換するなどして、養育費分の金額をしっかりと回収するための制度です。

強制執行は養育費の不払いにおすすめ

強制執行制度を利用する必要がないケース

強制執行は、相手が養育費の支払いを拒否した場合に初めて必要となるものです。

当然ですが、相手が自分から養育費を支払ってくれるのであれば、強制執行などする必要はありません

しかし、世の中には我が子のためとはいえ、離れて暮らす子どものためにお金を支払いたくないと思う人も残念ながら存在します。

どうしても自分から養育費を支払ってくれない相手に対しては、国家権力の力を借りて、無理やりにでも支払わせなければなりません

その制度が強制執行だということです。

強制執行制度は「伝家の宝刀」

それでは、相手が自分から払ってくれている場面では強制執行制度は意味がないのでしょうか。

そんなことはありません。

普通の大人であれば、世の中に裁判の制度や強制執行の制度があること、払うべきお金を支払わないと強制執行されてしまうらしいということは、(正確な知識まではなくとも)漠然とは知っている筈です。

そのような知識があるため、養育費を「もし払わなかったら強制執行されるかもしれない、どうせ差押えされるのならちゃんと払おう」と考える人も、多少なりともいる筈です。

いざとなったら力づくで相手を制圧する(養育費を回収する)という法律の強制力が、相手を従わせる動機付けになっているのです。

その意味で、強制執行という制度はいわば伝家の宝刀として存在しています。強制執行を直接には使わない場面であっても、養育費の支払いの確保のために強い力を発揮している、というわけです。

養育費の不払いに対して強制執行を行う3ステップ

このような強制執行ですが、実際にその制度を利用するためには、次の3つのステップを踏む必要があります。

債務名義の取得

最初のステップは、債務名義(サイムメイギ)の取得です。

債務名義とは

多くの方にとって聞き慣れない言葉だと思いますが、「債務名義」とは、裁判所などの公的機関が、ある人に(養育費などの)権利があることを認めた文書のことと思って頂ければ、概ね間違いないです。

例えば、裁判で勝訴したことによって得られた勝訴判決(確定したもの)は債務名義の代表的なものです。

養育費の支払を求める調停が成立した時に作成される調停調書や、裁判で和解したときに作成される和解調書、公証役場で作成される強制執行認諾文言付きの公正証書も代表的な債務名義です。

養育費との関係では、特に重要な(よく使われる)債務名義は、

  1. 調停調書
  2. 公正証書
  3. 審判書
  4. 和解調書
  5. 勝訴判決

以上の5点があげられます。

養育費について払うことを約束したことを記載した誓約書・念書・合意書やLINEその他のSNS、Eメールでの記録などは、裁判所や公証役場など公的機関を介して作成されたものではなくただの私的な文書にすぎないため、債務名義にはあたらずそれに基づいて強制執行をすることはできません

とはいえ、ガッカリすることはありません。そのような私的な文書であっても、重要な意味があります。

そのような証拠が残っていれば、それは、養育費の合意についての重要な証拠となりますし、裁判あるいは公正証書を作成する際に、それに記載されている事項を前提としたものとできる可能性が非常に高まります。

つまり、誓約書などの私的文書やLINEでの記録などは、債務名義そのものではないのですが、債務名義を作成するための重要な証拠となる、ということです。

とはいえ、債務名義が存在しない場合には、これらの証拠などをもとに、債務名義を取得する手続きをしなければなりません。

養育費の債務名義を取得する3つの方法

養育費の債務名義を取得する代表的な方法は3つです。

  1. 公正証書を作る
  2. 家庭裁判所に調停・審判を求める(調停調書や審判書を作成する)
  3. 離婚訴訟などの際に作成する(和解調書又は勝訴判決を獲得する)

特に、公正証書を作成するか調停調書によることが多いと思われます。

相手と養育費の額や期間などについて話し合いでまとまれば、その結果を公証役場で公証人の前で公正証書にすることで、債務名義を作成することができます。

2人の話し合いだけでは話がまとまらず、裁判所に間に入ってもらう場合には、調停や審判を求めます。調停の申立ての方法については、以下のリンクも参考にしてください。

調停・審判では、主に養育費の算定表に基づいて養育費の額を決定してもらいます。

養育費の算定表の見方について知りたい方向け:

新算定表の見方をわかりやすく弁護士が解説

以上のように、債務名義を作成するという最初のステップは、権利があるということを、公証人なり裁判官なりという公的機関に認めてもらうステップであると考えて頂ければよいと思います。

そのような公的期間のお墨付きがないのに強制執行ができてしまうとすれば、「私は養育費を毎月10万もらう権利がある!」と主張するだけで、その真偽もわからないまま強制執行が認められてしまうことになってしまいます。そのようなとんでもないことが起こらないように、強制執行をするためには、債務名義という公的機関のお墨付きが必要なのです。

養育費請求先の対象財産の具体的な把握

公正証書や調停調書などの債務名義を獲得すれば、その段階で、養育費を任意に支払ってくれる相手方もいます。

その場合には、支払ってもらえたのですから、強制執行をする必要はありません。

しかし、債務名義を取得しても相手方が養育費を支払ってくれないという場合には、強制執行準備に着手することになります。

そのためには、相手方の財産を把握する必要があります。

強制執行の対象となる財産

把握するべき主な相手の財産としては、

土地建物などの「不動産」、

現金や高価な貴金属美術品などの「動産」

預貯金や給料などの「債権」

等があります。

差押えの対象財産として特に重要なのは、預貯金や給料などの債権です。

養育費請求先の財産の具体的な把握

ポイントは、強制執行をするためには、自分で、相手の財産を見つけ出さなければならない、ということです。

「私は債務名義があります、だから、とにかく相手の財産を差し押さえてください」という裁判所への申立てでは、強制執行は認められず却下されてしまいます。

相手のどの財産に対して強制執行するのか、具体的に特定しなければなりません

たとえば、

  • 相手方のA銀行B支店の預金口座
  • 相手方のC県D市E1-2-3の土地
  • 相手方の勤務先であるF社に対する相手方の給料債権

といったような形で、具体的に特定します。

仮に相手に財産が無いような場合には、強制執行は不可能です(差押えが空振りに終わります)。

仮に相手に財産があっても、その財産を見つけられないような場合にも、強制執行は不可能です。

相手方の財産を把握すること、これが第2のステップです。

ただし、相手の財産の所在が分からなくても、相手に「支払わなくてはまずい」と思わせることで相手に支払を促す「間接強制」(かんせつきょうせい)という制度もあります。

2020年4月に改正民事執行法が施行され、その結果、相手方の財産を把握することが、今までに比べ非常に容易になりました。

改正民事執行法については、詳しくはこちらの記事も併せてご参照ください。

改正民事執行法の4つのポイント【不払い対策】

 

強制執行の申立て

債務名義も取得し、かつ、相手方の財産を把握できたら、いよいよ、その財産に対して、強制執行を申し立てます。

強制執行の対象となる財産の種類に応じて、以下のとおり手続きが異なります。

土地や建物といった不動産:不動産に対する強制執行

現金や高価な美術品、貴金属といった動産:動産執行

預貯金や給料などの債権:債権執行

不動産に対する強制執行は、相手の所有する不動産を売却(強制競売)して、その売却代金を払ってもらう(配当を受けるといいます)によって養育費などの権利(債権)を回収する手続きです。

不動産を競売するためには、不動産の専門家に調査してもらう必要があるため、その費用はまず申立人側で支払わなければなりません。最低でも60万円程度かかり、非常に高額です。

動産に対する強制執行は、動産を差押えて売却し、その売却代金をもって債権を回収する手続きです。

債権に対する強制執行は、相手方が銀行や勤務先などの第三者に対して有している債権(銀行に対する預貯金というのは、相手が銀行に対して保有している預貯金債権です)を差押える手続きです。

養育費の不払いの際の注意点

以上、なかなか面倒なステップだな、と思われたかもしれません。

しかし、法律などを無視して実力で相手の財産を奪うことは、たとえ真の権利者であっても、認められていません。これを自力救済の禁止といいます。

それを認めては、社会秩序が保てないからです。

養育費の請求をする場面ではなかなか考えにくいことかもしれませんが、仮に、無理やりに相手から実力行使で財産を奪うと、民事上は不法行為として損害賠償責任を負いかねないですし、刑事上も窃盗罪や強盗罪、器物損壊罪等といった犯罪になりかねません

ですから、仮に養育費の義務者に対して実力行使が可能であると思われるような場合でも、あくまで法律のルールに基づいて養育費を支払ってもらうことが大切です。

養育費の強制執行を行うために3つのステップを把握しましょう

この記事では、強制執行をするためには、大きく3つのステップを踏む必要があることを説明してきました。

この3つのステップのうち、今はどこにいるのか、自分の立ち位置を把握すると、先が見えやすくなります。

参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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