みなさんこんにちは。
相続と不動産で困った時の一番最初の相談先、
相続と不動産のパーソナルアドバイザー、税理士 兼 弁護士の中澤剛です。
この記事では、遺言書の作成について解説します。
遺言書作成の最大のメリット・・・「争族」を防ぐ
(1)適切な遺言を作成しておけば、「争族」を防ぐことができる
もしも亡くなった方が遺言書を残さなかった場合、相続人が法定相続分に従って相続することになりますが、財産の分け方を話合いによって決めなければなりません。
相続人と法定相続分についてはこちらの記事をご覧ください
話合いがスムーズにまとまれば良いのですが、誰がどの財産をもらうのか、いくらもらうのか、相続人同士で争いになってしまうことがよくあります。
遺産分割調停や審判といった裁判手続きにまでならなくても、遺産分割の話合いの中で、相続人同士に争いが発生してしまうことはよくあるのです。もちろん、裁判手続きになってしまうことも少なくありません。
たとえば、ある不動産をどの相続人が分けるかでトラブルになったり、
「私はお父さんの面倒をたくさん見たからもっと遺産をもらうべきだ。お兄さんは認知症のお父さんのお世話は全然しなかったじゃないか」
とか、
「弟は大学まで行かせてもらったのだから、すでに親からたくさんもらっている。遺産分割でもらう額は少しにするべきだ」
などと意見が対立してしまうことは少なくありません。
遺言書がなかったが為に、遺された家族間での紛争が発生してしまうということがあり得るのです。
もしも適切な遺言があれば、「財産を誰にどの程度相続させるか」についてあらかじめ決められているので、話合い(遺産分割協議)の手間が不要となり、相続人は、亡くなられた方の気持ちに納得して、手続きを進めることが可能となります。このようにして、遺言書によって「争族」となる事態を防ぐことができるのです。
ですから、家族に想いを伝え、家族の争いを防ぐという意味で、遺言はぜひとも作成しておくべきです。
(2)想いを伝えることができる
遺言では、付言事項という形を通じて、家族への感謝や子供たちに希望することなど、ご自身の想いを伝えることができます。
(3)財産を自分の考える形で残すことができる
もともとご自身の財産なので、どう処分するかを自分で決められるというのは当然といえば当然ですが、遺言を作成すれば、遺言者の思うとおりに財産の分け方を決めることができます。
(4)「ウチは遺産が少ないから大丈夫」「ウチは仲が良いから大丈夫」は危ない
「遺産で揉めるのは、何億も遺産のある家の話でしょ。ウチは遺産なんかないから、大丈夫」という方は非常に多いです。
しかし、遺産が少ないと揉めない、というのは正しくありません。
最高裁判所が出している統計資料(平成30年度司法統計年報(家事事件編))によれば、遺産分割事件のうち、遺産の額が1000万円以下の事件が33%、5000万円以下の事件が43.3%です。
つまり、裁判にまでなってしまう事件のうち、75%以上は、遺産の額が5000万円以下の事件なのです。
遺産の額の多少と、「争族」のリスクの有無とは無関係なのです
また、「ウチは家族仲が良いから大丈夫」という方もいます。
たしかに、通常の状況では、仲が良いかもしれません。しかし、 肝心なのは、深刻な経済的な利害対立がある中で、仲が良い関係でいられるかどうかです。
今まで仲良くしていても、財産を自分が手に入れることができるという可能性を認識したとき、他の家族親族と感情的なもつれや対立が生じ、仲が良かった家族の人間関係に亀裂が生じてしまうということは、残念ながら、決して少なくありません。
私自身、身近な経験として、仲が良いと思っていた親族が、遺産相続を機に仲たがいしてしまう様を見ました。遺産相続を機に入った家族親族の絆に、深いヒビが入り、しかもその亀裂は、何年たっても修復されず、深く、大きな爪痕を残してしまいます。
仲の良い家族を仲の良いままに維持するためにも、適切な遺言をぜひ残すようにしておきましょう。
遺言で法的な効力があること、法的効力がないこと
遺言でできること
遺言でできることは、主に遺産の承継に関することです。
たとえば、千葉県の自宅は長男にあげる、都内のマンションは長女にあげる、預貯金は全部次女にあげる、などといったことです。
そのほか、遺言執行者の指定や、祭祀承継者の指定、子の認知、未成年後見人の指定なども可能です。
また、法的効力は認められませんが、「子どもたちはお互い仲良くしてほしい」、などといったことを遺言書に記載することは素晴らしいことであり当事務所でも推奨しております。
遺言でできないこと
他方、上に記載した以外のことは、遺言書に書いても、法的効力を認められません。
特に注意するべきことは、遺言執行者にもろもろの死後の業務を頼むことです。
例えば、死後、訃報を知人・友人に伝えることを遺言執行者に託す、葬儀を依頼する、などということは遺言としての効力が認められません。これらの事を頼みたいのであれば、別途死後事務委任契約を締結する必要があります。
遺言の種類
遺言書には、大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
秘密証書遺言というものもありますが、作成が面倒な割にメリットもないため、利用している人はほとんどいません。
自筆証書遺言
手書きの遺言です。
公正証書遺言
公証役場で作る遺言です。
遺言作成の流れ
遺言を作成するには、まずは専門家が希望をヒアリングし、同時に、戸籍や不動産登記簿などの基本的な情報収集をします。
その上で、案文を作成します。
場合によっては、後日の紛争を予防するために、遺言能力を証明する証拠を保全することがあります。
その後、公証役場と日程を調整して遺言を作成します。
以上が遺言作成の流れになります。
亡くなって相続が発生すると、遺言を執行(実現)していくことになります。
遺言の作成方法については、こちらの記事もご参照ください
遺言にまつわるトラブルのリスクと予防
せっかく有効な遺言書を作っても、それだけでトラブルを全て防ぐことができるわけではありません。
(1)記載漏れの財産
遺言に記載の漏れていた財産がある場合には、死後にその財産が見つかると、その財産は未分割財産となります。つまり、その財産については、遺言がないのと同じことになり、遺産分割をめぐる話し合いが必要になってしまいます。
そのため、その財産をめぐって裁判になってしまう、ということもあります。
(2)遺留分侵害
法律には、遺留分という、遺言でも侵害できない相続人の最低限度の取り分が定められています。せっかく有効な遺言書を作成しても、相続人の遺留分を侵害するような遺言では、死後にトラブルが生じてしまうこととなります。
遺留分についてはこちらの記事をご参照ください
(3)不動産をめぐる紛争
不動産を分割して相続させたために、相続が開始した後で、不動産の管理でトラブルになることもあります。
例えば、二人の子どもがいる方が、「二人とも仲良くして欲しい」との願いから、自宅不動産を2人に平等に半分ずつに分けたとします。この場合には、そのような願いが裏目に出てしまい、後々子どもの一方がその不動産を売却したい場合などに両者の意見が食い違って売却ができず、共有物分割訴訟という裁判にまで発展してしまう、ということもあります。
(4)相続税をめぐる問題
また、内容が有効で紛争を回避できるものであっても、相続税のことを考慮しないで遺言を作ってしまうと、不必要に過大な相続税が課せられてしまうこともあります。
このように、適切な遺言を作成して相続を円満に実現するためには、複雑な法律や税金の知識が不可欠です。
相続と不動産で困った時の一番初めの相談先
弁護士・税理士・宅地建物取引士 中澤 剛
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