遺言の作成をお手伝いしていると、遺言の作成者から、「実家の土地は平等に子供たちに半分ずつ分けたい」などと相談されることがあります。
しかし、特別な事情がない限りは、このような不動産の共有はオススメしていません。
この記事では、不動産を共有にするとどんな大変なことがあるかということを、相続と不動産のパーソナルアドバイザー、税理士 兼 弁護士の中澤剛が解説します。
不動産共有の2つの問題点
不動産共有の問題は、大きく分けて次の2つです。
- 思い通りに決められない(不自由)
- 共有者がさらに増えるリスクがある
順に説明します。
問題① 思い通りに決められない(不自由)
不動産を自分一人で所有していれば、誰に気兼ねすることもなく、その不動産をどうするのか自分一人で決めれば良いだけです。
しかし、不動産の共有というのは、その名のとおり、ある不動産を他の人と共同で所有している状態です。
そのため、共同所有者の意向を無視して、その不動産に関する意思決定をすることはできません。
- 自由に売れない
- 自由に貸せない
- 自由に修繕できない
といった問題が生じます。
自由に売れない
不動産を共有にしていると、自由に売ることができません。
例えば、ある土地を、太郎が5分の3、花子が5分の2という共有状態になっていると仮定しましょう。
太郎としては、この土地を売りたいと思いました。しかし、花子が反対した場合には、太郎はこの土地を売ることはできません。
太郎は自分単独で土地の共有持ち分5分の3だけを買取業者などに売ることはできるのですが、その場合には、土地全てを売った場合(の5分の3の代金額)に比べて、大幅に安い値段でしか売ることができません(太郎から持ち分5分の3を買った人は、5分の2の持ち分を持つ花子とその土地を共有することになります)。
このように、不動産を共有にしていると、不動産を自由に売ることができない(自分だけで売ることもできるが、その場合は安く売らざるを得ない)という問題があります。
自由に貸せない
不動産が空室の場合などは、その部屋を賃貸に出すことで、賃料収入を得たいと思うこともあるでしょう。
しかし、不動産を共有にしていると、自由に人に貸すこともできません。
自由に修繕・リフォームができない
不動産を所有していると、老朽化や、新たに賃貸に出す場合などに修繕・リフォームが必要になる場合があります。
しかし、修繕をする場合は、その費用は、共有者が共有割合に応じて負担することとなります。
例えば、ある建物を太郎が5分の3、花子が5分の2が共有していて、修繕費が500万円かかるとすれば、太郎が300万、花子が200万円負担する必要があるわけです。
そのため、修繕費が高額になる場合などには、全員の共有者の了承を得ることが困難な場合があります。
その結果、老朽化した建物が、修繕されないままとなってしまうということも有り得るわけです。
問題② 共有者がさらに増えるリスクがある
不動産を共有にしていると、共有者がさらに増えるリスクがあります。
典型は、相続の場面です。
先ほどの例と同様、ある建物を、太郎が5分の3、花子が5分の2という共有状態になっていると仮定しましょう。
二人のときですら、共有なのですから物事を決めるのは大変なのは、先ほど述べたとおりです。
しかし、もっと大変なのは、例えば花子さんが亡くなってしまった場合です。
花子さんは結婚していましたが子はおらず、花子さんの両親はすでに亡くなっていました。花子さんは3人兄弟の末っ子で、兄と姉がいますが、姉はすでに亡くなっていて、姉には3人の子(花子さんの甥と姪)がいたとします。
この場合には、花子さんの相続人は、花子さんの夫と、花子さんの兄、そして3人の甥っ子姪っ子の5人となります。
今回の例では、花子さんんは子がおらず、直系尊属もいないので、兄弟姉妹(及びその代襲相続人である甥・姪)が相続人となる、ということです。
誰が法定相続人になるのか、代襲相続とは何かについては、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
このように、共有者というのは、時間の経過とともにさらに増えるリスクがあるのです。
共有者が増えるほど、全員で合意するのは難しくなりますので、ますます、不動産の処分は難しくなってしまう、ということです。
ではどうすればいいの?
以上のように、共有にしてしまうと、苦労が絶えないのが通常です。
そのため、遺言を作るような場合には、極力遺産は共有にしないことがオススメです。
ではどうしたらいいのかというと、基本的には、
その不動産は売却して、現金化することを検討するべきでしょう
もちろん、思い入れのある不動産を売却するのは忍びない、子どもたちに引き継いで欲しい、という場合もあるかと思いますが、そのような場合には、上記共有のリスクを理解した上で行うことが大切です。