「特定の相続人には遺産を相続させたくない」、そのように思う方もいらっしゃるかもしれません。
もしも、遺産を相続させたくないような相続人がいる場合、どうしたら良いのでしょうか。
この記事では、相続と不動産で困った時の一番最初の相談先、
相続と不動産のパーソナルアドバイザー、税理士 兼 弁護士の中澤剛が、そのような場合の対処法を解説します。
3つの方法
遺産を相続させたくないような相続人がいる場合、取り得る対策は次の3つです。
- 遺言作成
- 遺留分対策
- 廃除
順番に説明していきます。
1 遺言作成
最初にするのは、遺言の作成です。
遺言を作成する方法としては、主に手書きの遺言と、公証役場で作る公正証書遺言があります。
誰にどの遺産をあげたいのか、法律の手続に則って作成します。
遺言は、例えば「令和●年5月吉日」という日付を書いたら無効、など、法律の定める細かいルールがあります。
遺言を作るメリット、遺言の作り方については、こちらの記事をご覧ください。
誰かに遺産を相続させたくないという場合、遺言を作成しないと始まりません。
2 遺留分対策
遺言作成後の対策が、遺留分対策です。
遺留分とは、遺言では侵害できない最低限度の相続分のことです。
遺留分の基本については、こちらの記事をご覧ください。
相続させたくない相続人に遺留分を主張される可能性があることから、遺留分の対策が必要です。
遺留分の金額は、遺留分の基礎となる財産(A1) × 遺留分割合(A2) によって決まります。
遺留分の金額の計算方法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
そのため、主な遺留分対策は、
- 遺留分の基礎となる財産(A1)を減らす
- 遺留分割合(A2)を減らす
の2点になります。
遺留分の基礎となる財産(A1)を減らす
遺留分額(A)を減らす方法の一つは、遺留分の基礎となる財産の価額(A1)を減らすことです。
そして、遺留分の基礎となる財産(A1)は、
遺産(相続開始時の財産額 A3)
+
生前の贈与の額(A4)
ー
債務の額(A5)
により計算されます。
遺産(A3)が減ると、遺留分の基礎となる財産(A1)も減る
遺産の額(A3)が減れば、遺留分の基礎となる財産(A1)も減ります
たとえば、遺産(A3)が1億円あった人が、散財して1000万円になったとすれば、遺留分も減ります。
とはいえ、これは他の相続人の遺産も減ってしまうので好ましくはないです。
他方、生命保険を活用すると、生命保険の受取金は遺産ではないとされているので、遺産の額(A3)を減らすことが可能となり、遺留分を減らすことが可能となります。
生前贈与(A4)をしても、遺留分は減らない
遺産(A3)が減ると遺留分も減ると聞いて、
じゃあ、「遺産の額(A3)を減らし、相続させたい人に生きているうちに多額の贈与をしておこう」、と思う人もいるかもしれません。
しかし、そのような生前贈与は遺留分の計算の基礎となる金額に含まれてしまうので(A4)、そのような対策は無駄です。
法律はそういうことは許さないシステムになっているのですね。
そうはいっても、「贈与」というのはただであげることですので、ただであげなければ生前贈与(A4)にはあたりません。
例えば、「息子の家に住まわせてもらっているから家賃として月3万円息子に払う」などといった、物やサービスに対する対価の支払いであれば、それはスーパーで野菜を買ったり、大家さんに家賃を払ったりするのと変わりません。相手が大家さんやスーパーではなく、身内だったというだけです。
生前贈与ではなく、遺産が減る(A3)ことになるので、遺留分も減ります。
もっとも、相続人に対する贈与なのか、対価の支払なのか、遺留分権利者は紛争になれば必ず疑義を唱えるでしょうから、身内といえどもしっかりと契約書を残すなどしておくことが必要です。
借入(A5)が多いと遺留分が減る
借金が多いと、遺留分は減ります。
とはいえ、借金を増やすと他の相続人の負担も増えることになるので、あまりお勧めできる方法ではありません。
遺留分割合(A2)を減らす
遺留分割合を減らすことでも、遺留分を減らすことはできます。
遺留分割合というのは、基本的に法定相続分のさらに半分です。
法定相続分が4分の1なら、遺留分割合は8分の1、ということです。
法定相続分については、こちらの記事をご覧ください。
もしも法定相続分が8分の1になれば、遺留分割合は16分の1になる、ということです。
そのため、例えば、結婚をしたり養子縁組をしたりするなどして、相続させたくない人の法定相続分が減れば、遺留分も減る可能性があります。
遺留分を放棄してもらう
なお、話合いによって、遺留分を事前に放棄してもらうという方法もあります。
これには、遺留分の権利者の事前の承諾と、家庭裁判所の許可が必要です。
3 廃除
遺留分対策にも限界がありますので、最終手段は「廃除」です。
廃除については、こちらの記事を参照してください。
これは、例えば虐待をしてきた相続人に対して、遺留分すらも奪い取る手続きです。
なかなか認められませんが、有効な場合があります。
相続と不動産で困った時の一番初めの相談先
弁護士・税理士・宅地建物取引士 中澤 剛
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